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ネット販売の見えざる手(アダムスムス) [政治経済]

先日は、MMT及び日銀の程よいインフレ率2%等少々戯言を並べましたが・今回は、嘗て私達が学んだ18世紀の経済学者アダムスミスは、著書「国富論」(An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations.)で自由な市場取引を通じて決定した価格を「神の見えざる手invisible hand」に依って決められた価格と称し、之が最も公正で適正な価格であると述べています。 然し、此の「見えざる手・インビジブル・ハンド」が実際に作用するには・参加者が無数に有り、然も、取引される物や情報を参加者全員が共有出来る事が不可欠な条件で、個人の情報収集能力に差異や限界があれば、「見えざる手」は作用せず、売り手に有利な状態となり、価格は下がり難い状況になります。どちらかと云えば、従来は此の様な状態でありました。・・・ 処が、現在はインターネットが急激に普及し、個人の情報収集能力の差異や限界は殆ど無いに等しく、細部に至る迄ネットの情報は誰もが共有出来、適正な価格が瞬時に多くの消費者に伝わる、デジタル社会です。実際、私達は欲しい品物や航空券、ホテルの宿泊券、或いはスポーツや芝居の入場券等を購入する際には、ネットで価格をチェックし、求めるのが普通になっています。売る側も又、需要や在庫或いは商品の状況に応じ、頻繁に価格を変え購入者に提供するダイナミック・プライシングが一般的になりました。・・・ 此の変化が「見えざる手」の作用を実現させる事に大きく貢献し、最近の市場はアダムスミスが提唱した価格形成メカニズムが実現し易い状況になっています。・・・ 此の様な状態は、一般的に消費者、即ち買い手に有利な状態であり、商品の価格は下落し易い状況であると云われています。・・・ 此の様な状況の中、先進国の多くの中央銀行では未だにインフレ目標を掲げて金融政策を運営しています。日銀も、同様に未だに2%のインフレ目標を堅持し、更なる金融緩和とマイナス金利政策を続けています。其の効果か、我が国では2016年第4四半期以降「需要が供給を上回り」需給格差は拡大傾向に有ります。当然物価は上昇する筈です。然し、物価が上昇基調に転じる兆候は依然見えて参りません。之は、ネット販売が普及し・「見えざる手」が作用し・価格低下圧力が掛かり・インフレが抑え込まれているからではないでしょうか?・・・ 此の様にネットを通じ効率的な価格設定が促されているとすれば、現在の日銀の政策では期待する物価上昇率2%の「程よいインフレ」状況にする事は困難で有りましょう。原点に立ち返り、目標値のみならず、政策自体再考をせねば課題の達成は難しいのでは・・・ P1000676.JPG P1000674.JPG P1000719.JPG (註)ダイナミック・プライシング(Dynamic Pricing)とは、同一の商品やサービスの価格を需要と供給の状況に合わせて変動させる価格戦略。動的価格設定や変動料金制ともいう。 ダイナミック・プライシングの身近な例では、スーパーマーケットで閉店時間が迫るに従って、野菜、総菜、魚介類などの生鮮食料品を割り引きして販売する例がある。
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